(反)ユートピア小説

大学院の制度的な問題をめぐって、十年以上前に書かれたいくつかの公的資料を読む。
備忘までに二つ。

ほとんど(反)ユートピア小説を読んでいるような気分になる。

昨今の経済危機を背景に、解雇規制の撤廃などによって労働生産性を向上させ、イノベーションを促進すべきだという議論がある。現在の雇用制度では、中高年の労働人員に余剰を生む一方で、若年労働者の技能蓄積が妨げられているからだ。

大学という「知」の「イノベーション」の場でも事情は同様だろうという気がする。最も身近な問題の場合には、年齢構成の歪みを生じさせたうえ、それを事後的にまったく修正できていないという、人事の無定見も与っているが。

合意形成に少しでも問題があると「改革」が立ちゆかなくなり、いつの間にやら、既得権益の保護が優先する──という出来事がまた繰り返されている。ある組織に外部から資本を注入して組織内組織を作る方策は、一時的なその場しのぎではありえても、制度改革と正面から向き合うことを結果的に回避させてしまった。

とはいえ、制度も組織もそれだけでは動かない。とくに創造的であることを求められているアカデミアでは。逆に言えば、制度や組織を守るために人事が行なわれるようになっては終わりだ。だから、最終的には人事で動かすしかない、ということか。
そのうえで、天命を待つ。