少年時代の坂
短い帰省。
週末に帰省し、帰宅した後、原因不明の高熱で臥せる。
小学校からの帰り道をたどり直してみる。
このあたりは小さな丘陵のある地形で、やがてなだらかな坂を下る。
樹木の生い茂る一帯は、沼が干上がり窪地になったことを除けば、さほど大きな変化もない。
僕の住んでいた住宅は丘の中程にあって、その坂を上り、記憶に残る桜の樹を探す。
小学校の最初の年だけは少し離れた中心部の学校に通っていた。
千葉大学医学部のキャンパスを通り抜けてゆく。
僕らは、両脇が急な傾斜で野球場やテニス・コートへと下っている尾根のような道を、毎日歩いた。
恐ろしげな大木──牛頭天王を祭る塚がそこにあったと後に知る──の脇を廻り、野球場の方へと下ってゆく細い道。
遠い記憶へと繋がる道。
──それがどんな経験の形式を育んだのかを僕はまだ知らない。