「読書委員が選ぶ2008年の3冊」と《読書委員この1年》
遅ればせながら、昨年末、読売新聞に掲載された記事です。
全体の内容はこちら。
わたし自身については次の通りです。
〈1〉太田好信著『亡霊としての歴史』(人文書院、2400円)
〈2〉ユベール・ダミッシュ著『雲の理論 絵画史への試論』(法政大学出版局、4300円=松岡新一郎訳)
〈3〉佐々木中(あたる)著『夜戦と永遠 フーコー・ラカン・ルジャンドル』(以文社、6600円)
〈1〉は現在へと執拗(しつよう)に回帰してくる過去という現象をめぐる文化人類学者の論文集。人類学のあり方を問い直す危機意識が大きな刺戟(しげき)になった。〈2〉はルネサンス以降の西洋絵画や中国山水画における「雲」という記号の機能を探った美術理論の古典。待望の邦訳を慶(よろこ)びたい。〈3〉の現代フランス思想論は、才気煥発(かんぱつ)のあまり、筆が時々上滑りするものの、際立った明快さと疾走する独特な文体が魅力。次作が期待できる論者の登場である。